慶應義塾大学SFC環境情報学部2010年度入学試験問題 小論文 合格者再現解答


問題は以下で確認して下さい。


http://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/10/k20.html


(1)(500字以内)


電子図書館」構想が意味するところがつまりはクラウドコンピューティングであることは資料A-1から読み取ることが出来るが、この構想に近い理念を持つウィキペディアの現状を考えれば、それが最も機能するのは、資料A-2で述べられているように「真に世界に開かれたメディア」であるときである。つまり、アクセス端末の普及を含めたデジタルディバイドの根絶を含め、そのコンテンツが全ての人にとって等価値でなくてはならないのである。しかし、同資料にあるとおり、絵画などに比べて文章はそのアクセシビリティ(読めるかどうか)が保証されにくく、それを読んだ人が得られる知識に差が出来てしまう。それでは意味がない。そこで白羽の矢が立つのが自動翻訳であるが、これは文意などの問題により普及しないだろう。結果としてその文章はコンテンツの等価値を保証する<普遍語>で書かれていなくてはならなくなる。そして、その候補が英語である。資料3で述べられているように、<大図書館>計画が進めば進む程、それを利用したい人はますます英語で知を営むようになるだろう。日本語のような少数言語は学問の場では用いられなくなり、日常生活でしか使われなくなるだろう。(499語)




(2)(300字以内)


まず長所についてであるが、資料B-1で述べられているように、電子書籍は印刷書籍と異なり物理的スペースをとらない。また、そのコンテンツが電子データであるため、検索や更新、流通が容易である。また、データがオンラインで管理されていれば、どの本を持って行こうかという心配もなくなる。次に短所であるが、これは資料B-2・3で述べられているように、電子書籍はデータで構成されているため、複製などが簡単にできる。また、個人で制作・流通が可能であるためーこれはしばしCGMの議論で指摘されることだがーその内容の正確さ、起源、文脈的意味に関心が持たれず、それ自体の質が保証されないという点である。(283字)



(3)(700字以内)


私はSFCにおいて「コンテンツ」―特にUGC/CGMとWEB2.0的メディアの研究がしたいのであるが、今まで個人的に調べ物をする際に、大変不便な思いをした。まず第一に、私のように研究分野が極めて新しい分野の場合、参考に出来る資料がそもそも少ないのである。すでに完成され、体系化されてしまった(あくまでたとえだが)物理や化学のような学問についてであれば、大学の図書館に行けば困ることはないだろう。しかも、刻々と深化を続け、その時代における意味さえ常に変化させているインターネットメディアのような分野の場合、一般的な「テキスト」だけでは捉えきれないのである。映像、音楽、絵画…メディアの形態も様々だ。つまり、数が少ない上に多方面に散在している資料を集めるのが大変なのである。第二に、図書館は単に本がたくさんある場所ではなく、公共の場であると言うことである。上記で述べた私が必要としているデータを一同に集めれば、一つの図書館を埋めるかもしれない。しかし、それではニーズが少ない上に場所ばかり占め、図書館とは言えない。つまり、今までの印刷書籍の図書館も公共の場にしては十分にニーズを満たしてはいなかったのである。しかし、電子図書館はこれらの諸問題を解決してくれる。第一の問題は、全てのメディアをデータ化し、クラウドの中にたくわえることで、今この場にいながら最新の情報に触れることが出来るようになるし、第二の問題は言わずもがな、データは絶対量でニーズを満たす。以上から、私にとって電子図書館情報格差を是正し、新たな知の創出を促進する意味を持ち、私を含めた全ての人の間で等しく共有されるべきである。(683字)